11. 空。あおい、そら。「彼女」は呟いた。首が痛いほど見上げた先には、真っ青な空が広がっている。 遠い声が蘇る。「彼女」は空を見るのは初めてだった。「彼ら」は何度も、数え切れぬほどに見てきた。 開けっ放しの目が乾いて痛んだので、「彼女」は目を閉じた。空が見えなくなる。しかし、わずか何ミリかの 扉でなど、世界は遮れない。まぶたを閉じていても、太陽の、あおぞらのまぶしさは、光は彼女の目に届いた。 もう一度目を開けて、初めての、何度も見た、空を見た。 永遠に空を見ていたような錯覚を振り切って、地上に視線を戻せば、彼が見えた。一歩一歩、彼女は 彼に向かって歩いた。あと少し、もう少しで、手が届く。 「君は……」 手を伸ばせば触れられる距離まで近づいた時に、彼が突然振り返った。彼女はこっそり、彼に触れ損ねた手でもういっぽうの手を握った。 「……骸?」 驚きもなく、沢田綱吉が言った。 「はい、ボンゴレ」 ただいま帰りましたか、初めましてか迷って、六道骸は返事をするにとどめた。 「そっか……」 彼は素直に頷いた。もう、その呼び名を否定することもない。俯く横顔に前は見えなかったかげりを見て、六道骸は柄でもなく不安になった。 「また、会えたでしょう?」 だから慌てて言ってみたが、彼は唇を吊り上げて、泣きそうな顔をした。 「うん……」 「おかえり」 終 11 作話トップ |