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 病床の主が口を開く。視線はカーテンのかかった窓に向いている。 従者はじっとその横顔を見ていた。
「後、長くて半年だそうだ」
 従者は眉を寄せた。
「そう、ですか」
 しかし、それほど大きな感情の波は生まれなかったらしい。 言葉に詰りながら、従者は静かに頷いた。
「さよならだね、骸」
「ええ、ボンゴレ。しばしのお別れを」
「・・・・・・」
 ドン・ボンゴレは口を開き、大きく息を吸い、吐いた。
「次に会う私は、お前のことなど知らないよ」
「そうでしょうね。転生は人の記憶をリセットしますから」
「お前はそれでいいのか」
「悲しいことですが、仕方ありません」
「それでも、それは私なのか」
 あまりにも淡々としていた。二人とも。
「ええ」
 特に従者は揺ぎ無い目をしていた。
「カーテンを開けてくれないか。地球が見たい」
「はい」
 一礼して椅子を立った従者が、窓に歩み寄る。両手が左右に動いて、カーテンを開いた。




『ループ・ザ・ループ』